07時半頃、花屋のおいちゃんとハハが話す声で目が覚めて起床。猫好きでよくタマさんの相手をしてくれてたおいちゃんなので、やっぱり話題はタマさんが亡くなったこと。とりあえず、ハハも私も寝不足続き。
起きてみても私が寝る前と同じ場所・同じ向きで横になったままのタマさんを見ているだけで違和感が。
本気で「なんで起きて来ないんだろう?」「なんであちこち寝場所を変えるはずなのに同じ場所で寝てるんだろう?」と疑問に思うほど現実を拒絶してるわけじゃないのですが、一昨日までは
- あちこち確保してるらしき寝場所にいる。よく足音だけで察知される。
- とりあえず「ぐるる?」と疑問形でのどを鳴らしながら頭を起こしてこっち見る。
- 眠すぎるときは、そのままだんだん頭が傾いて行って、一旦、二度寝にかかる。
- 二度寝にかかっても気にはなるらしく、結局、頭を起こす。
- あくび。毛づくろい。
- やっと起き上がる。
- ひとしきり伸びをする。
- テテテテと寄ってきて遊ぼうとする。
- 歩きながら「さらに充実した伸び」をすることに集中しすぎて、伸びが済んだら納得してその場でちょこんと座ってしまうことも。
となるのが当たり前すぎたので、当たり前すぎた出来事が起こらないことへの違和感。
ハハはハハで、「いくら話しかけてもこっちを向いてくれない」「よく話の途中でうっとうしがって逃げたのに、逃げない」などの物足りなさを感じているようです。
二人とも状況は理解できてるんだけど展開が急すぎたので、染み付きまくった「それまで」の感覚からの切り替えがうまくできていません。
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◆ハハは、ぼちぼちとタマ用品の整理・廃棄作業へ。時折、手に取った用品から在りし日のタマさん思い出しモードに移行して泣きはじめ、私も泣かされてしまい、結局、これはそんなに急いで捨てなくてもいいという結論に至ったりしています。
うーん。そうなるぐらいなら、タマさんが家にいてくれる最後の日にそういう作業をしなくても、それは後回しでもいいんじゃないのか。もう話しかけてもタマさんは返事も反応もしてくれないけど、ふかふかの毛をナデナデする機会はまだ与えられているんだから。
あと1時間少しでタマさんの身体がすっかり見えなくなる状態にして、大阪市環境局の方が来られるか電話が入るのを待たなきゃいけないけど。
ハハや、とりあえず腰を落ち着けてみたらどうですか。タマさんの姿を見て触れられるのは、残りわずかな時間です。もうしばらくすれば、ハハが在庫していた新品ふかふかバスタオルにタマさんはくるまれて、窮屈な段ボール箱の中に入ってしまうのです。
そう伝えると、すぐに「泣きながらタマさんにありがとうと言う会」へ移行しました。
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◆タマさんの様子がおかしくなった24日01時頃から24日11時半頃の最期までの流れがあまりにも急展開だったので、二人とも心の準備ができていたわけでもなくなんだかピンと来ないわけですが、私にとっても不思議だしハハにとっても感慨深い部分があるようです。
ハハ曰く「タマは、お前が動物病院へ行くように仕向けたんやないかな。で、お前に動物病院から連れて帰ってもろて、お前に最期を看取って欲しかったんやないやろか。一番ようなついてたからなあ」と。まあ、そのとおりの流れになってます。
ハハ通院の事情がなければ、動物病院行き自体はハハとハハ知人さんに任せていたかもしれないし。自分が眠っていた06時〜08時にそのときが来ていれば、私が看取るということはできなかったし。
動物病院にいるときや帰途で持ちこたえられなくなっていれば、「自宅で。家族と」は実現しなかったことだし。
タマさんとしてはハハよりも好きだったらしき私が珍しく動物病院へ行くことになって、獣医師の診察を経て「タマさんの身に何が起きたか」を私が理解するようにしたうえで、おうちに帰るまで持ちこたえて、それからわずか30分後の最期。最期のときにそばにいたのは私。
偶然の積み重ねなのかもしれないのですが、ハハの考えでは「最期を迎えるまでお前にそばにいてもらおうとしたのだろう」と。
タマさんは苦しみ始めてから10時間以上、全く眠ることがないまま最期を迎えたので、相当な苦しみと戦い続けていたのだと思います。あと3時間ばかし頑張ってくれていれば、ハハも一緒に看取ることができたのですが、さすがにそこまではもう頑張れなかったんだろうと思います。
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◆事あるごとに、ハハが同じ言葉を言います。
「なんや…スカみたいやな…」
「ハズレのようだ」と言ってるわけではなくて、本人が言いたいのは何だか虚しい気持ちだし何だか物足りないし、生活にも心にもぽっかり穴が開いてしまったような感じだ、というようなこと。
うーん。それをね、どうにか乗り越えて「タマさんのいない日々」に慣れていかなきゃならんのですけどね、まあ、ちょっと時間はかかりそうですよね。お互い。
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◆10時から、タマさんの身体を布でくるんだり箱に入れたりという作業にかかろうかと言っていたのですが、二人とも名残惜しい気持ちが強いのでずるずると作業開始が遅れて10時半に。
まず、ハハが出してくれたふかふかバスタオルへ移動。タマさん、ふかふかした新タオルの寝心地はどうですか。前足で丹念に足踏みして具合を確認といういつもの作業なしで寝かせてしまったけど許してください。一旦全身をくるくるとくるんでから、とりあえず顔だけ出してあげました。あとでまた頭まですっぽり覆ってしまうけど、もう少しだけ顔を見たい。エサや爪研ぎ段ボールのカケラは紙で包んでお腹の辺りに置いてからタオルでくるみました。
しばし、ハハとともにまた「泣きながらタマさんにありがとうと言う会」を開いたのち、なんとなく転がっていた段ボール箱に入っていただくことに。当然、タマさんが如何に段ボール箱を好んでいたか、上に乗るのも中に入るのも好きだった、とくに気に入ってたのはあのミネラルウォーターの箱だ、なんていう思い出話に寄り道しながらの作業。
タマさん、この箱(袋ラーメンを箱買いしたときのもの)の上に乗ってるのはよく見かけたけど、中に入ってるのは見たことがありません。そんな箱だけど我慢してください。どうにか中に入ってもらって…うー、まだフタを閉じたくない。しばらく布をめくって頭を撫でたりしたのちまた布をかぶせて、今度こそフタを。もうタマさんの姿を見られなくなるのかと思うと涙と鼻水がすごい勢いで出てくるのですが、いつまでもそうしてるわけにはいかないので、思い切ってフタを。
がさごそしてたら、そこそこ評判がよかった猫じゃらし系のオモチャがあって金属部品も使われてなかったので、箱に貼付。花を一輪供えているように見えるけど、猫じゃらしのオモチャ。
この箱をビニールの袋に入れて…と、受け渡し時の指定状態に。
うーん、タマさんが昨日の昼から横たわっていた場所にタマさんの姿はなくなって、代わりに袋に入った箱があるだけの状態に。うーん。
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◆タマさんの最期から24時間後の11時半過ぎにさわやかなおにいさんが家にやってきて、手数料を支払って、タマさんが中に入った箱をお渡し。
もうタマさんの身体は家の中になくって、もう戻って来ないんだなあと思うと、例により涙と鼻水が止まらない状態に。さっきまで「うーん、タマさんが横になってたのに、今は箱しかない…」と物足りなさを感じていたスペースには何もなくなってしまったので、「もう箱すらない…」と、さらなる物足りなさが。
当分、いろんな局面でこんなような物足りなさを感じるんだろうな。
「あ、言う間やな…。もう…タマ…おらん…」
本当にあっと言う間にいなくなったなと、せがれも思っています。
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◆先ほどのおにいさんに
「火葬は14時からなんですよ」
と教えてもらえたので、ハハとともに14時頃に手を合わせることに。よくわかんないけど、ナムナム。
タマさん、12年間ありがとう。小さな身体で安らぎを与えてくれたり癒してくれたり、ありがとう。最期は苦しかったと思うけれど、ゆっくり休んでください。安らかに眠ってください。
二人とも、そんなようなことをどこぞで火葬されているだろうタマさんに話していました。もうタマさんの身体はどこにもないんだ。
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◆そして、これから本当にタマさんがいない生活というのが始まるわけですが、「クモマッカー後のハハと自分の二人だけ」というのは経験のない状態なんですよね。タマさんが来たときには祖母存命だったし、タマさんが来て半年後にハハがクモマッカーになったので「よくわかんないことを言う家族(祖母とかハハとか)」の相手を私がせにゃならんようになったときには、既にタマさんが家にいたのです。
これからどうなって行くんだろう。とりあえず、わずか数時間のうちに「タマさんがいなければ、このハハと二人でこの家に今も住んでることはなかっただろう」という結論に至りました。7〜8年前の状況等々を考えると「この家を出て一人暮らしをする」という建設的な方向ではなく「もう、生きない」という方向に走っていた気配。
うー、話し相手とか無理です。こっちの話は全然聞いちゃいないし。そうして神経が参ってきても身体接触で心を癒すことが巧みだったタマさんの助けはもう借りられない。
うーん。
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◆頭を抱えたまま、とりあえず外出してみました。乗るのに覚悟がいる乗り物は避けたほうがよさそうなので、AddressV100で。
うーん、運転してても変な感じ。集中力とか注意力がすこーんと抜けてるんだろうな。当面は、お買い物程度とか神経使わずに走れる道とかだけを利用するようにしよう。こんな状態でツーリング等に出ると何でもないところで転倒したりして無用なトラブルを招きそうなので、自粛。
で、外出してみて感じたのですが、外でも何だかうまく過ごせないですね。何かしら自分のたたずまいかたに違和感を覚える。当然、今までそうだったように「ヒトや世の中と、うまくやって行けてない自分」を感じながら家に帰ったところでしっぽをからめたり頬をこすりつけることで「そんなことはどうでもいいから、とっとと俺と遊べ」と伝えてくれたタマさんはもういないわけで。
「12年も生きたのなら、年寄りだから仕方ないだろう」という声もあったりするわけで、それはそれで当たってはいるのですが、全くヨボヨボにならず、あちこちにぴょこんぴょこんと飛び移って華麗な運動神経を披露していた猫が翌日には他界してしまうという状況で「年寄りだったんだから」と聞かされてしまうと、釈然としない気持ちが高まるだけなのです。
だんだん、心にぽっかり開いた穴も緩和していくんだろうとは思うんですけど、ね。
冷凍冷蔵庫さんは、少し元気になってくれたようです。毎日、氷を作ってくれます。
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◆ここは「壁に向かって独りでしゃべるサイト」なので、壁に向かって。
うちには、ハハにとっても私にとっても「唯一の家族である」という重要な役目を果たしてきた貴重な存在があったのです。猫のタマさん。

くつろぐタマさん。2007年05月29日撮影。リンク先は無駄に大きな1280x960px.の画像。
ハハにとっては、めんどくさがって話を聞かないせがれとは違う唯一の話し相手として機能していました。ときどき、おとなしく横になって寝転んでる耳元で「今日連れて行ってもらったスーパーが如何に大きかったか」を延々と聞かされて途中で寝場所を移動していた辺り、タマさんほどの器を以ってしても「話し相手」という作業は難しいもののようです。
私にとっては「嘘を言わず、聞こえるところで陰口を叩いて笑いものにすることもない家族」というだけでも貴重な存在なのですが(ハハに騙されたり、デカすぎる声で陰口を叩かれていて聞きたくないのに聞こえてしまったりするのは日常茶飯事です)、そのうえ、あまりにも世の中とうまくやって行けてなさそうな自分にしょんぼりしたときには、
- 手や足をよく猫舌でなめる。なぜかハハはあまりなめてもらえない。
- しっぽをからめながらくるくると足元で歩き回る。
- 頬をこちらの身体にこすりつけてくる。頭もごんごんぶつけてくる。
- あぐらをかいて座ると、前足で足踏みをして寝心地のよい位置・角度等を入念に調査しまくったのち、丸くなって脚の上で寝る。
- 一緒に遊んでくれる。割りと痛い。
いろんな方法で心を癒してくれる存在でした。寝転んでいるときでも、目が合えば必ず起き上がって「くるくる」「すりすり」「ごんごん」をするためにテテテテと寄ってきてくれました。ハハは目が合っても寄ってきてもらえないことすら多々あるので「なんでウチにはなつかんのか」と前々から悔しがっていました。なぜタマさんがそんな区別をしていたのかは不明。
こちらが忙しいとき・気分が乗らないときには、せっかくテテテテと寄って来ようとする目の前で戸を閉めたり、タマさんの追跡を振り切ったことも多々あったのですが、人間関係でありがちな「あいつ誘っても来ないからもう呼ばない」「あいつめんどくさいからもう遊ばない」というようなこともなく、次にまた目が合えば必ず寄ってきました。何度つれなくあしらわれても「こいつは必ず遊んでくれる」と信じてくれていたようです。
23日の日中も、いつもと同じようにしっぽをからめながら私の周りをくるくる回ったり頬をこすりつけたりしていました。いつもと全く同じように。
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◆24日の01時頃に、トイレに起きたハハが来て「タマ!タマ!歩き方がおかしい!」と。
タマさんの様子を見に行くと、後ろ足に全く力が入らなくなっているようで前足だけで下半身を引きずって歩いていました。タマさんに声をかけながら様子を見てると「歩き方」だけの問題ではなくて移動するたびに尿をもらしていたり、ときどき嘔吐したりと、あまりにも様子が変です。
水を汲んできてタマさんの前に置くとものすごい勢いで水を飲みます。脱水症状?でも後ろ足が動かなくなってるのがおかしい。肉球を触ると反応するので今のところ神経は麻痺してないらしい。水を飲みまくるタマさんの様子をそんな風に観察していると、せっかく水を飲んだのにまた嘔吐。以後、大量に水を飲む→嘔吐を何度も何度も繰り返し。
ときおり、タマさんは何かしら思うところがあるのか前足だけで身体を引きずって移動をするのですが、移動先でも失禁+嘔吐、そしてまた移動、その移動先でまた…と繰り返すうちに、だんだん疲れてきたのかグッタリする時間が増えてきました。
と、思ったら。
「その状態でどこにそんな力が?」と思うような勢いで前足だけを使って高速移動を…しようとする先は、とにかく狭い場所だったり、人間が入れないような物陰だったり。この辺りで、世間で言われる「猫はそのときが来るのを知ると身を隠そうとする」とか言う話を思い出しました。考えたくもないけど、そう、なのか?苦しいだろうし疲れきってるだろうに必死になって物陰に入り込もうとしては力尽きてしばらくグッタリして、少し休んだら別の物陰に…なんて姿を見てるだけで涙がぽろぽろ出ました。
そのうち、水も飲まなくなるし(たぶん、飲めなくなった)、身体を起こせなくなってしまうし、息をするだけでも大変そうだし…と、さらに涙がぽろぽろ。
そんな風に苦しみまくるタマさんをハハと一緒に見守ったのち06時頃から一眠り。ハハは徹夜。
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◆08時にハハとハハ知人さんの話し声で目が覚めると、やっぱりタマさんは苦しんでる状態のまま。全然収まってないのかとがっかりしたり、寝てる間に最悪の事態が起こらなかったことにかすかに安堵したり。
とりあえず、ハハ知人さんがタマさんを近くの動物病院へ連れて行ってくれることになりました。いま起きたばかりの人はまだ立って歩けるところまで脳が起きていません。ハハはクモマッカー後に必要らしき検査等々の隔月通院やデーにつき遠くの大学病院へ行かんならん、らしいです。「予約したぁるから」と。事態の深刻さに気づいてないのか、この人にとっては深刻な事態じゃないのか、どうなんだろう。予約してても1週先に延ばしてもらうとか…「はよ準備せな!あー、忙し」…いまは何より身支度が大事、と。
09時前にハハ知人さんがタマさんを連れて動物病院へ。15分ほど遅れて寝起きが悪過ぎる人も動物病院へ。普段はハハとハハ知人さんに任せきりにしてたので久しぶりに行く動物病院へ。
ハハ知人さんから獣医師からの説明と現在行われてる処置を伝え聞いて、ハハ知人さんは「予約したぁるから」方面の要員になるためタマさん見守り要員から離脱。ハハはハハ知人さん家のクルマに乗せてもらって「予約」の病院へ行くのです。診察の予約…うーん、予約…なんでキャンセルしないんだろう…。
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◆伝え聞いたのは「後ろ足が動かなくなった原因は足の付け根にできた血栓による麻痺。心臓も弱ってるらしい。不整脈が出てると。脱水症状も起こしてる。足の具合はかなり悪いようで、壊死の可能性もあるらしい。まあ、うまく行けばまた歩けるようになるらしいけど、当面は様子見で、と。今は点滴を受けてるところ」ぐらいの話。
名前を呼ばれて処置をしている部屋に入ると、すぐにお医者さんが丁寧な説明をしてくれました。内容的には「さっきの人にも説明したんだけどなー」だったはずなのですが、そんな素振りも全くなく、実に丁寧に。どうも「うまく行けばまた歩けるようになる」可能性とは逆の可能性ばかりが気になるお話でした。
心臓が弱っているけど急に不調になったわけではなく以前から不整脈は出ていたし進行した結果が今の状態、とにかく心臓が弱ってるので刺激を与えてはいけない、びっくりしたりこわがったりという負担だけでも心臓が停まってしまうかもしれない、入院させても家族がいない場所でそうなるのは猫がかわいそうなだけなので連れ帰って安静にしてあげて欲しい、自力では水が飲めないはずだから脱水症状を緩和する点滴を受けるために明日も連れて来て欲しい、日頃から猫カゴに入るのを嫌がる・怖がる猫であれば明日の通院は猫カゴに入れずに布でくるむなど工夫して欲しい、猫カゴに入れようとするときのストレスが引き金を引いてしまうかもしれないから、と。血栓のことも、足が壊死する危険なども説明されたけど、こんな話聞いて「うまく行けばまた歩けるようになるけど、当面は様子見」と言える神経は持ち合わせてない。
説明のあと、さらに処置を行って終わったら猫を渡すので待合室で待つようにと言われて、退室。泣きたいのをこらえながら待合室へ。
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◆やたらと長く感じられた待ち時間ののち、名前を呼ばれて猫カゴを受領。タマさんはすごく苦しそう。意識は…あるんだろうけど、あまりの苦しさで呼びかけに反応したり顔の向き変えたりするどころじゃないんだろうな。この姿を見てるだけで声を出して泣きそうになるけど、こらえるもんだろうな。
目一杯、目に涙がたまりきった状態で明日の予約・会計を済ませて、動物病院を出ました。
あふれてきて、ぽろぽろこぼれてくる涙を拭きながら自宅までの路地を歩いていると、路地から見える通りにハハ知人さん家のクルマが停まっていてハハ通院のために出発するところでした。「予約したぁるから」「今日の帰りか?(午後)3時か4時頃やな。向こうで(ハハ知人)さんらとお昼一緒に食べるからな。あれ、いつも楽しみにしてんねん」…うーん。うーん。
タマさん。まだ帰途ですが、タマさんは相変わらず苦しいですか?反応もできないぐらい苦しいですか。でも、胸がひこひこひこひこ動いてるのは心臓の動きですよね。やったらめったら速いのがすごく心配なんですけど、でも、動いてるということですよね。タマさん、もう少しでおうちですよ。泣いててごめんなさい。
猫カゴの窓からそんな風にタマさんの様子を何度も確認しながら、11時頃帰宅。
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◆先生に言われた言葉を思い出して、とにかくタマさんに刺激を与えないように猫カゴの中から出してあげて静かに寝かせるにはどうしたらいいんだろう?としばらくあれこれ悩んだのち、そーっとタマさんの姿勢が変わらないように気をつけながら抱き上げて、風通しがよくて水がすぐそばにある縁側に寝かせました。
エサも水も縁側にあるのです。今の状態では食べるはずもないだろうし、水も飲んでくれないだろうけど。
試しに自分の指に水をつけてタマさんの口のそばへ持っていってみても、それどころではない勢いで苦痛と戦っているようで、見向きもしません。名前を呼んでも目も合わせてくれません。とにかく、それどころではないようです。
何をどうすればいいんだろう。このまま見守ることしかできない、のか。こんなに苦しそうなのに、泣きながら名前を呼んだりそーっと撫でるぐらいしかできないのか。別の部屋でタバコを吸って戻ってきても、台所に飲み物を取りに行って戻ってきても、同じ状態。
うーん。どーしたもんだか。
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◆困りながらまたタバコを吸いに行って戻ってくると、状態が変化していました。
タマさんの身体がゆっくりビクンビクンと痙攣のような動きをしていました。頭や胸や前足は、缶コーヒー1本まるごと引っくり返したぐらいの液体が床に広がっていて、そこに浸かって…ということはありえないぐらい大量に吐いた、のか。
何度呼びかけても、目をかっ開いたまま身体をビクンビクンとさせてるだけ。胸に手を当ててみても身体が動くときの「びくん」しかわからない…。涙をぼろぼろ流しながら、胸に手を当てたまま「タマー!タマー!」と繰り返し大声で呼んでいるうちに痙攣のような動きがさらに弱く、ゆっくりになっていきました。何かをつかもうとしたのか苦しかったのか前足を何度かゆっくり動かしたり首を少し動かしたりしただけで、いつものように呼びかけに振り向いてくれることが全くないまま、痙攣の動きすらなくなってしまいました。
動いてない。胸に手を当てても、鼻先に指を持って行っても、どこも動いてない。
開いたままの目は…タマさんの目は最期に何を見ていたんだろう。
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◆涙をぼろぼろこぼしたり鼻水をすすり上げたりしつつ、思いきり取り乱しながら、電話が苦手なのにさっき診察してもらったばかりの動物病院へすぐに電話しました。今ならまだ何かできるんじゃないのかと、よくわかんない期待を込めて。
要領を得ないことを言ってるのに、さきほど診察してくださった先生に取り次いでもらえました。
病院での説明のとおりの出来事が家族の期待よりも早く起きたのが現状であること、おそらく大量の嘔吐が心臓への負担になったことが原因だろうということ、もうできることはないという事実、無理に入院させていれば不可能だった「住み慣れた家で。家族のそばで」そうなったのはせめてもの救いだったと言えるのではないかというお話。それから、なぜかこちらから連絡したことに対するお礼の言葉を繰り返し何度も。
こちらも丁重にお礼を。タマさんの身に何が起きたのかを調べてきちんと説明してもらえたことへのお礼を。泣きじゃくりながら。
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◆様子がおかしくなってからたった10時間そこら、動物病院から帰ってきて30分そこらの、2007年08月24日11時半頃、心肺停止。
生後2週間(推定)のときに偶然の詰め合わせみたいなきっかけでうちにやって来て飼われることになったタマさんが、12年の生涯を終えました。
12年間、ハハや私に目に見えないものをたくさんたくさん与え続けてくれて、ありがとう。
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◆泣きじゃくって涙と鼻水を垂らしまくりながら、まだ名前を呼び続けながら、吐瀉物を拭いたり、汚れてしまった口元や前足を…うー、濡らしたタオルで拭いてもあまり綺麗にならない。タマさん、うまく拭いてあげられなくてごめんなさい。いつも自分で毛づくろいして綺麗にしてたのにね。
タマさんがさっき家に帰って来てからずーっと寝転がってるここはエサも水も置いてあって風通しもよくて、よく日向ぼっこをしてビタミンDを生成したり外を眺めたりしていた縁側だから、タマさんが大好きだった場所ではあるんだけど、移動しましょう。日が直接当たらない、扇風機の風が来るところへ。「夏場の、もう少し経てば日なたになる場所」から移動する理由はタマさんにとってどうでもいいことなので気にしないでください。
ふかふかタオルを敷いてあげられればよかったのですが、ふかふかタオルを在庫してそうなハハは留守なので、くたびれタオルしかありません。タマさん、くたびれタオルの敷布団と掛布団でも許してください。
毎朝タマさんのエサを海苔の缶から容器に移してくれてたおかーちゃんがなかなか帰って来ないですね。タマさんが動きもせずにじーっと静かに寝転んで待ってるのに。
横に座って泣きじゃくっている人のことは気にしないでください。
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◆14時半頃、ハハ帰宅。外から帰ってきたときにまず見える縁側から網戸越しに居間の私を見て「(タマは)どないや?」という表情。私が黙って首を横に振りながら泣きじゃくっているのを見て、すぐに伝わったようです。
「タマー…タマー…」と泣きながら家に入ってきたハハに黙ってタマさんが横になっているところを示して、二人でしばらくタマさんのふかふかの毛を撫でながら大泣き。事切れるまでの経緯等々を説明。
「…今日が…病院行く日ぃやなかったらな…こない早うになるとは…」
だから予約は変更できたんじゃないのか、と尋ねてみたら、変更できたし薬の備蓄も1週間分はあったけど、とにかく「そこまでひどいと思っていなかった」らしいです。病院往復の車中でも獣医師からの説明を受けたハハ知人さんと気軽に「また明日連れて行かなあかんねんなー。明日もまた病院行くのん手伝うてやー」ぐらいに話してたそうです。深夜から明け方までの様子を見てて、なんでそう思えたんだろう。
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◆飼っていた犬や猫が亡くなった場合にどうすればいいのかよくわかんなかったのですが、ハハによると「前に死んだ犬のときは保健所に来てもらった」というので、ハハ任せに。ハハが謎の間違い電話をしてせがれが保健所の電話番号を調べなおして、ハハが保健所に電話をして「なんとか事務所、いうとこ」の電話番号を教えてもらったようです。
ハハが「なんとか事務所」(注:市の環境局)に電話し直して、話が進んでるなと思ったら途中で急に「いやあ…なんやようわかりません」と言いながら(いつも、本当にしゃべりながら電話の子機をこっちへ渡す。「ようわからんので家族に変わります」ときちんと伝えてから子機を渡すことは絶対にないので、子機を受け取ったとき相手は話し続けてる)子機をよこしたので、電話を変わってみると。
「こちらでは合同火葬という形になりますので、ご遺骨をお返しするということができないんですが、それでもよろしいでしょうか?」
ハハは「ごーどーかそー」だか「ごいこつ」で挫折したようです。終始、丁寧に説明をしてもらえて、翌日の10時半〜14時の間にタマさんを引き取りに来らるることになりました。
「大阪の夏」であることを考えると、すぐに引き取りに来られて呆気なくタマさんの姿が目の前から消えるでもなく、2〜3日ばかし余計な心配をしながら安置せにゃならんわけでもない翌日というのは、ちょうどいいと言えばちょうどいい形になりました。
・
◆明日の10時頃から引き渡し時の指定の(梱包)状態にする気持ちの準備をするとして、とりあえず、今夜は通夜…のような何か。
「燃えやすいものなら、エサなども一緒に入れていただいて構いません」と言われたので、横になっているタマさんの脇に
- タマさんがいつも食べていたカリカリ。人間の食い物を与えたこともなく、缶詰フードも何年かに1回しか与えてないし、後述のさほどドライでない食べ物は錠剤服用のためのダミーなのでタマさんは基本的にカリカリしか知らない。
- タマさんが甲状腺機能亢進症とやらを患ってることがわかって以来、錠剤を埋め込まれてると気づかずに食べていた、カリカリ音がするほどには乾いてない少し柔らかい食べ物。カリカリより美味しいのか、小さくちぎって手に乗せて与えるとすぐに食べてた。
- またたびの実。うー、「ストレス解消に!」とか書かれてたりするので、もっとこれをたくさんあげて一緒に遊んであげればよかったのかもしれない。
- 爪研ぎ段ボールを小さくサイコロ状に切ったもの。爪研ぎはタマさんにとっての日々の仕事でもあり、気持ちを落ち着けるためにも行うものであったようなので、ないと困るのではないかと。
これだけ並べてみました。一緒に入れてあげよう、と。ハハが元気だった頃によく買って来る割りにはあまり評判がよくなかった数々の猫用オモチャは置かず。でも、タマさんが気に入ってくれたオモチャも確かあったので、そのなかで燃えやすいものを見繕って一緒に入れてあげたほうがいいのかな。
金属部品がついた首輪は外しました。タマさんはもううっかり外に出ることもないので「飼い猫です」というアピールも要らないし。今までずっと邪魔な輪っかをつけてもらっててごめんなさい、とか言いながら。
日付が変わる頃まで、ハハと二人で時折タマさんを撫でたりしながら、12年間の思い出を語ったり、ひたすらタマさんにお礼を言ってわんわん泣いて過ごしました。イマドキの人間の「お通夜」(ときに故人のことより宴会が大事)よりも本来の通夜に近い状態の時間があったかもしれません。
話していて、自分だけでなくハハにとってもタマさんへの感謝の気持ちが強く、「ペットではなく、空気」なぐらいに家にいるのが当たり前すぎる存在だったことがわかってきました。
二人ともに当面は心に穴が開くのかな。家族のようにかわいがることも家族以上にかわいがることもなかったけど、だから「家族」なわけで。
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◆徹夜だったハハが寝入ってからも、しばらくタマさんの横で鼻をすすりながらしょんぼりしていました。
静かに横になっているタマさんは、普段の「よく眠っているとき」と同じように見えました。
36時間前は同じような姿で本当に「単に眠っていた」のに、24時間前には呼びかけには応えつつも苦しそうにしていて、今は二度と起きることのない眠りの中にいる、という流れが速すぎたこともあって、タマさんのいない生活が見えてきません。ただ、寂しいんだろうな何か物足りないんだろうなぐらいで。
まだ、意識のどこかはタマさんがいつもテテテテと駆け寄って来てた状態のままで止まっています。
そんな考えのまま、ときどきタマさんの寝姿を眺めながら、28時頃に就寝。